日本語事業部試験課 山菅 香
2006年12月3日 日曜日、日本語を母国語としない人々を対象とした日本語能力試験が、海外46カ国・地域の127都市、国内の20都道府県で、今年度も一斉に実施されました。
1984年から始まったこの試験は今年で23回目、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は現地試験実施機関と協力して海外分の実施を担当しています。試験開始時は約8,000人だった応募者も、今年度は全世界で約53万3千人、そのうち、中国本土は全体の約40%を占める約22万人が応募しました。
日本語能力試験には1級から4級まで4つのレベルがあり、各級とも「文字・語彙」「聴解」「読解・文法」の3つのセクションから成り立っています。1級が最も難しく、漢字は2,000字程度、語彙は10,000字程度を習得していることが認定基準となっています。
さて、私は今年、この日本語能力試験の実施に立ち会うため、香港に出張しました。1984年から毎年この試験を実施している香港で、今年度は約1万人が受験しました。香港では香港日本語教育研究会が試験実施機関として、試験の受付から試験当日の実施、結果通知書の送付まで、年間を通して試験実施業務にあたっています。
試験本番の12月3日、実施機関のスタッフは朝から大忙しです。当日早朝、それまで厳重に保管されていた問題冊子等を会場別に運び出し、各会場の控え室では、試験教室ごとにわかりやすいように並べます。会場には案内係も配置し、続々とやってくる受験者の教室への誘導や、試験開始後に遅刻してきた受験者の対応をします。香港では試験会場が6つあり、最も収容人数の多い九龍湾貿易センターでは、約5,000名の受験者が試験を受けました。受験者が皆、真剣なまなざしで試験に取り組んでいる光景が印象的でした。
ちなみに、香港では就職や進学目的でこの試験を受ける人は少数派で、大半は趣味で日本語を勉強し、自分の実力を測ることが目的のようです。中には、合格してもより高い点数を狙って受験し続ける人もいるとか。仕事が終わったあとに、カルチャースクールや大学院に行って勉強する人も多いと聞きますから、香港の方々の向上心の高さが伺えます。
さて、無事試験が終わった後も、実施機関のスタッフの業務は続きます。受験者の解答用紙を取りまとめ、日本に返送する作業が残っているのです。解答用紙は日本に返送された後、採点され、翌2月中旬頃には受験者全員に合否結果通知書、合格者には認定書が併せて送付されます。その数カ月後には、次の試験の広報を開始し、願書受付が始まるのですから、実施機関は年中フル稼働です。
このように、日本語能力試験は海外の実施機関の皆さまに支えられて実施しているということを、今回の出張を通して、身をもって感じることができ、大変貴重な体験となりました。
海外から日本への人の移動や日本国内で就業上日本語能力を必要とする人の増加、海外における日系企業等の活動の活発化、日本のポップカルチャーへの関心の高まりなどに伴い、今後も受験者増の傾向にある日本語能力試験。世界に誇れる試験であるよう、ジャパンファンデーションは今後も、日本語能力試験の拡充、安定実施に努めていきます。